カプリ島の船着き場、朝の9時。地中海の光が岸壁の白い石に反射して、海面がさざめくたびに光の模様が変わる。そこに佇む女性の腕に、ラフィアのバスケットバッグが揺れている。

夏のバッグ選びには、素材の記憶がある。ラフィア椰子の繊維が指先に伝える感触、熱帯の光を受けて深みを増すウィッカーの色、職人の手が編み上げた規則と不規則の境界線——それらすべてが、バッグを持つという行為を豊かにする。

バスケットバッグの素材を知る
夏のバスケットバッグに使われる主な素材は3系統に分けられる。
ラフィア(Raffia)
アフリカ・マダガスカル原産のラフィア椰子から採れる繊維。軽さと柔らかさが特徴で、染色性が高いため発色が豊か。Sensi StudioやJacquemusが多用する。
ウィッカー(Wicker)/ オジン(Seagrass)
ヤナギやい草を編んだもの。構造的な硬さと立体感があり、バッグとしての形を保ちやすい。湿気に強く、海辺の使用に向く。
トクアラ(Toquilla straw)
エクアドルで採れるヤシ科の植物から作られる。パナマハットと同じ素材で、繊細な編み目が可能。Loeweが高品質のソースとして使用している。
5ブランド詳細比較
Sensi Studio(センシ スタジオ)
ブランド背景
コロンビア出身のデザイナー、Diana Acevedo Senjuが2012年に設立。南米の伝統的な手仕事——特にコロンビアの職人による天然素材の編み技術——をモダンなフォルムに落とし込んでいる。「ゆっくり作られたもの」を大切にするという姿勢が、このブランドの核にある。ニューヨークとボゴタを拠点とし、職人との長期的な関係性を維持することを運営の軸に置く。
素材と産地
マダガスカル産のラフィアを主体に、コロンビアの熟練職人が手編みで仕上げる。ひとつのバッグに数日から一週間かかるものもあり、その時間が形に宿っている。内布はコットン張り、留め具は真鍮製が多い。
特徴的なデザイン
ラフィアにゴールドのメタリックスレッドを編み込んだものや、ポンポントリムをあしらったものなど、表情の豊かさが魅力。形はミニトートからショルダーまで幅広い。
こんな人に
南米の職人文化に敬意を持つ人。サンダルとセットで「夏のトータルスタイル」を作りたい人。
価格帯: 35,000〜65,000円
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Loewe(ロエベ)
ブランド背景
1846年マドリード創業、スペイン王室御用達の歴史を持つ。Jonathan Andersonがクリエイティブディレクターに就任した2013年以降、クラフツマンシップへの再接続が加速した。「Craft Prize」を設立し、世界の職人工芸を支援するという行動がブランドの誠実さを物語る。
素材と産地
エクアドル産トクアラ草を職人が手編みし、カーフスキンのレザーパネルと組み合わせる。Weaverというモデルが代表的で、ストラップ・ハンドル・裏地すべてにLoeweの職人が手を入れている。バスケット部分とレザー部分の縫い合わせは、ミリ単位で調整される。
特徴的なデザイン
ラフィア × タンニンなめしレザーという組み合わせが唯一無二。使うたびにレザーが飴色に変化し、バッグが「育つ」感覚がある。アニャと呼ばれるアニメのキャラクタープリントが入ったものもあるが、スタンダードなウィービングが最も長く持てる。
こんな人に
クラフツマンシップに敬意を払い、10年単位でバッグと付き合える人。
価格帯: 180,000〜320,000円
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Jacquemus(ジャックムス)
ブランド背景
Simon Porte Jacquemusが19歳でパリに出て、2009年に設立。南フランス・プロヴァンスの光と風景が服の記憶に刻まれており、「感情から作る」というアプローチが全コレクションに通底している。農場でのショーや麦畑でのキャンペーンは、ブランドの土着的な詩情を体現している。
素材と産地
プロヴァンス地方の籐細工職人との協働で生まれたラフィアバッグが近年の代名詞。「Le panier」シリーズは、南仏の市場かごを現代的なプロポーションに再解釈したもの。竹製ハンドルとラフィア本体のコントラストが視覚的な強度を生む。
特徴的なデザイン
ミニマムなフォルムと南仏の職人技の組み合わせ。色はナチュラル、ホワイト、テラコッタが多い。持ち手の角度が計算されており、腕に掛けたときのバランスが独特。
こんな人に
南仏の夏を生きるような着こなしがしたい人。バッグを「ポエム」として持ち歩きたい人。
価格帯: 55,000〜95,000円
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Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ)
ブランド背景
1966年ヴィチェンツァ創業。イントレチャート(革の編み込み)という技法を持つ、イタリアクラフツマンシップの頂点のひとつ。「When your own initials are enough」というスローガン通り、ロゴを持たないことで知られる。Matthieu Blazy現クリエイティブディレクターのもと、素材の語りへの集中がさらに深まっている。
素材と産地
ラフィアコレクションでは、イタリアの職人がMaison Bottegaの革編み技術をラフィア素材に応用している。イントレチャートパターンをラフィアで再現することで、通常のバスケットバッグとは異なる構造的な美しさが生まれる。
特徴的なデザイン
編み目の密度と均一性が他ブランドとは次元が異なる。アルミニウムや真鍮のクロージャーが機能美を添える。重さはあるが、それが「持っている」という満足感に変換される。
こんな人に
イタリアの職人技術と向き合い、素材の完璧さに投資したい人。
価格帯: 250,000〜450,000円
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Ka Ka Du(カカドゥ)
ブランド背景
インドネシア・バリ島を拠点とする職人集団が手がけるバッグブランド。「カカドゥ」はオーストラリアの国立公園の名前から取られており、自然との共存という思想がブランドの底流にある。マスプロダクションを拒否し、職人ひとりひとりの手作業にこだわる。
素材と産地
バリ島およびジャワ島の職人が、地元産のパンダンリーフ(pandanus leaf)やラタンを用いて編み上げる。自然染料を使用した色付きモデルも存在し、サンセットオレンジやインディゴブルーが人気。
特徴的なデザイン
南国の素朴さとラグジュアリーの中間点を突く。完璧に揃った編み目より、少しの揺らぎが個性になる。ひとつとして同じものがない、という事実がこのブランドの最大の魅力。
こんな人に
バリの工芸文化を日常に持ち込みたい人。唯一無二の一点ものを持ちたい人。
価格帯: 15,000〜35,000円
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ブランド比較表

| ブランド | 価格帯 | 素材 | 産地 | テイスト | こんな人に |
|---|---|---|---|---|---|
| Sensi Studio | 35,000〜65,000円 | マダガスカルラフィア | コロンビア | 南米手工芸×現代 | 職人文化を重視する人 |
| Loewe | 180,000〜320,000円 | トクアラ草×レザー | エクアドル×スペイン | クラフツマンシップ | 10年育てたい人 |
| Jacquemus | 55,000〜95,000円 | ラフィア×竹 | 南フランス | 南仏詩情 | バッグをポエムにしたい人 |
| Bottega Veneta | 250,000〜450,000円 | インテレチャートラフィア | イタリア | 構造美×職人技 | 完璧な仕事を求める人 |
| Ka Ka Du | 15,000〜35,000円 | パンダンリーフ・ラタン | バリ島 | 南国工芸×唯一無二 | 一点ものを持ちたい人 |
コーデ提案|バスケットバッグで作る夏のスタイル

ビーチ → マーケット
Sensi Studioのラフィアバッグに、薄手のリネントップスとワイドパンツ。サンダルは皮ひも系を選ぶことで、バッグの素材感と会話させる。
カジュアルランチ
Jacquemusのミニバスケットをワンハンドルで持つ。ショートパンツとキャップで仕上げると、計算された抜け感が出る。
夕食前のアペリティーヴォ
Loeweのウィービングバッグ。トクアラのナチュラルとレザーのタンがあれば、どんな服色とも和解する。
ケアについて
ラフィアやウィッカーのバッグは、湿気に敏感だ。雨の日には使わないか、防水スプレーを事前に施すことを勧める。保管は型崩れを防ぐため、バッグの中に詰め物をして直射日光を避けた場所に立てておく。乾燥が強い季節には、軽く霧吹きをして繊維に水分を補うと長持ちする。
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カプリ島の船着き場の朝に戻ろう。彼女が持つラフィアのバッグは、島の光に馴染んでいる。それは素材が、その場所の記憶を知っているからかもしれない。どのバッグを選んだとしても、その素材が語りかける声に耳を澄ますことが、夏のバッグ選びの始まりだ。
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