ティレニア海の風が、頬を優しく撫でる。
機窓から見下ろすエメラルド色のグラデーションと、日に焼けた花崗岩のコントラスト。ここはイタリア、サルデーニャ島。地中海で2番目に大きなこの島には、日常の喧騒を忘れさせる特別な時間が流れている。
世界のジェットセッターたちが夏の目的地として選ぶのは、島の北東部に位置する海岸線、コスタ・スメラルダ(エメラルド海岸)。ただのビーチリゾートではない。そこには、美学と哲学に貫かれた、大人のための楽園が広がっている。

なぜ世界はコスタ・スメラルダに惹かれるのか
コスタ・スメラルダの物語は1960年代に始まる。イスラム教イスマーイール派の精神的指導者、アガ・カーン4世がこの地の圧倒的な美しさに魅せられ、仲間たちとコンソーシアムを結成。手つかずの自然を最大限に尊重しながら、世界で最も洗練されたリゾートを創り上げたのだ。
中心地となるポルト・チェルヴォの港には、世界中からスーパーヨットが集結する。しかし、街並みに派手さはない。建物の高さは厳しく制限され、色は周囲の自然に溶け込むアースカラー。ブティックやレストランが並ぶ石畳の小径を歩けば、この地が守り続ける「静かな品格」の意味がわかるはずだ。

記憶に刻む、エメラルドの海と隠れ家ビーチ
コスタ・スメラルダの主役は、何と言ってもその海だ。花崗岩が長い年月をかけて砕かれ、クリスタルのように輝く白い砂浜が広がる。風が穏やかな入り江に抱かれたビーチは、まるで天然のプールのようだ。
アガ・カーンのお気に入りだったという「プリンチペ・ビーチ」は、その象徴。三日月形の白砂と、どこまでも透明なターコイズブルーの海が広がる。強い日差しには、軽やかさと知性を両立。夏の強い日差しに映える「クリアフレームサングラス」がよく似合う。
少し足を延せば、カプリッチョリ・ビーチのような家族連れにも愛される穏やかな場所もある。海から上がったら、アートなプリントで選ぶ、大人のスイムショーツの上に、さらりとリネンのシャツを羽織る。それだけで、完璧なリゾートスタイルが完成する。

伝説のホテル、Cala di Volpeでの一夜
コスタ・スメラルダを語る上で、Hotel Cala di Volpeの存在は欠かせない。建築家ジャック・クエールが手がけたこのホテルは、まるで古代の村落が自然に生まれたかのような有機的なフォルムを持つ。映画『007/私を愛したスパイ』の舞台にもなり、その名を世界に轟かせた。
アーチ、曲がりくねった通路、不揃いな窓。計算され尽くした「不完全さ」が、訪れる者に安らぎを与える。プールサイドのバーで過ごす午後は、まさに至福のひととき。ここでは誰もが、物語の主人公になれる。テラスで過ごす夜には、デザイン秀逸なポータブルランプが、その空間をさらに特別なものにしてくれるだろう。

サルデーニャの恵みを味わう、美食の記憶
旅の喜びは、その土地の食文化に触れることにある。サルデーニャ島は、新鮮なシーフードはもちろん、羊の乳から作るペコリーノ・サルドチーズ、独特の風味を持つパン「パーネ・カラザウ」など、豊かな食の宝庫だ。
ポルト・チェルヴォの港を見下ろす「La Gritta」のようなレストランで、夕日を眺めながらディナーを楽しむ。地元産のヴェルメンティーノ種の白ワインは、魚介の旨味を最大限に引き出してくれる。ボトルが空になる頃、空は深い藍色に染まっている。そんな時間こそ、この旅のハイライトかもしれない。

VALEGIAの視点
コスタ・スメラルダは、単なる高級リゾート地ではない。一人の人間のビジョンが、自然への敬意と結びつき、半世紀以上の時を経て唯一無二の文化を育んだ場所だ。
作られた楽園は、今や本物の楽園として、訪れる人々の記憶に深く刻まれる。この夏、あなたは誰とこのエメラルドの海を見るだろうか。
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