スペイン、イビサ島の朝。石畳の小道を抜けると、目の前に広がる青い地中海。カフェから漂うエスプレッソの香りと、潮の匂いが混じり合う。こんな場所に似合う靴は、そう多くない。

夏の足元には、特別な解放感が欲しい。サンダルほどラフではなく、スニーカーほど重くない。その絶妙なバランスを持つのが、エスパドリーユだ。地中海の風と太陽の匂いがする、この素朴で美しい靴について語りたい。
エスパドリーユという名の哲学
その起源は14世紀のスペイン、バスク地方に遡る。農民たちのための作業靴だったという。靴底のジュート(黄麻)が、乾いた大地と灼熱の太陽から足を守った。アッパーのキャンバスは、丈夫で通気性が良い。
エスパドリーユは、機能から生まれた必然のデザインだ。だから美しい。そして何より大切な流儀は、素足で履くこと。ジュートの乾いた感触が、素肌に心地よい。その感触こそが、この靴の魂だ。
定番はスペインの老舗「カスタニエール」

Castañer PABLO
イヴ・サンローランが世界で初めてウェッジソールのエスパドリーユをオーダーしたことでも知られる、スペインの老舗「Castañer(カスタニエール)」。この一足があれば、夏の準備はほとんど終わったようなものだ。
リネンのシャツに、少し色褪せたチノショーツ。その足元に、ネイビーのキャンバスエスパドリーユを合わせる。気取らない、しかし確かな品格が漂う。これだけで、週末の東京が、まるで南仏のリゾートのように見えてくる。

都会を歩くなら、スエードという選択

Brunello Cucinelli Suede Espadrilles
エスパドリーユの魅力は、リゾートだけにとどまらない。アッパーが上質なスエードに変わるだけで、その表情は一変する。イタリアの至宝「Brunello Cucinelli(ブルネロ・クチネリ)」が作る一足は、まさに都会のためのエスパドリーユだ。
柔らかなスエードは足馴染みが良く、まるで靴を履いていないかのような錯覚に陥る。ジュートソールの軽快さはそのままに、ラグジュアリーな質感が加わる。夏の夜、リゾートでのディナーにはとろみ素材の長袖シャツと、このスエードエスパドリーユがあれば完璧だ。サンダルでは少しカジュアルすぎる、そんな場面で真価を発揮する。
¥80,000〜¥120,000
Amazon → 楽天 →
フランスのエスプリを足元に

La Maison de l’Espadrille
エスパドリーユの故郷はスペインだが、フランスにも素晴らしい作り手が存在する。「La Maison de l’Espadrille(ラ・メゾン・ド・エスパドリーユ)」は、フランスバスクの伝統的な製法を守り続けるブランドだ。
トリコロールや小粋なストライプ柄は、スペインのそれとはまた違う、エスプリの効いた魅力がある。白いTシャツとジーンズという普遍的なスタイルに、この一足を加えるだけで、フレンチシックな空気が流れ出す。夏の足元は、時にラグジュアリーなレザートングサンダルもいいが、この軽やかさは何物にも代えがたい。
VALEGIAの視点
エスパドリーユを履くことは、一種の宣言だ。それは「夏を楽しむ」という意思表示。ジュートソールがアスファルトを捉える乾いた音を聞くたび、遠い地中海の波音が聞こえてくるようだ。
選ぶのはキャンバスか、レザーか。スペインか、フランスか。どちらでもいい。大切なのは、素足で履くこと。そして、この靴が連れて行ってくれる場所に、素直に心を遊ばせることだ。今年の夏は、アジアの新たなリビエラ、ダナンへ、この一足を連れて行くのもいいかもしれない。
この記事はアフィリエイトリンクを含みます。
